鉄筋コンクリートを考える ~第4話:RCの寿命とコンクリートの中性化・延命のためにも塗装のすすめ~ 長野市 外壁塗装・屋根塗装専門店トラスト
こんにちは、長野市の外壁塗装・屋根塗装専門店のトラスト施工部Sです。
好評を頂いております鉄筋コンクリートを考えるシリーズ ~第4話:RCの寿命とコンクリートの中性化・延命のためにも塗装のすすめ~ をお届けします。
これまで、コンクリート材料について確認をした後、2つのRC構造のシステムについて話をしました。また前回の第3話では、RC構造に生じたひび割れ“クラック”に注目しました。
今回はRC構造の経年変化について検討していきたいと思います。
Ⅰ.コンクリートのPH(ペーハー)
PHの読み方は、独語読みと英語読みの「ピーエッチ」が混在していて、日本語では”水素イオン指数”と訳されます。現在ピーエッチと読むのが一般化しているようですが、SI単位ではないので今回は個人的に馴染みがある(ペーハー)で読みを統一したいと思います。
まずPH:水素イオン指数(ペーハー)は、水素イオンH+がどれだけ存在するかを示しています。
例えると普通の水道水1[l]の場合は、1[l]全部がH2Oであると仮定して、1[l]あたり1/(10^7)[mol](モル)個程度のH+と水酸化物イオンOH-がほとんど同じ数存在しています。ここに、酸性・アルカリ性とは、H+の個数に対応してOH-の個数が変化する性質のことなのです。
この時のH+の個数「1/(10^7)=10,000,000分の1」の乗数値がペーハーの数値を決定し、酸性・アルカリ性が評価されます。具体的には1≦PH<7:酸性、PH=7:中性、7<PH≦14:アルカリ性となります。
そしてこの普通の水道水のPH(ペーハー)は7、つまり中性となります。
参考資料【長野市上下水道局2019年度水質調査から抜粋・犀川上水系PH平均値:小市7.3/七二会7.4/高野7.7】
さて聞き覚えのフレーズとは思いますが、コンクリートはアルカリ性のため内部にある鉄筋を防錆しています。(第1話)
健全なコンクリートのペーハーは概ね12≦PH≦13と高く、強アルカリ性といえます。
この強アルカリ性の元をたどってみると、セメントの水和反応の進行によって水酸化カルシウム(Ca(OH)2)が生成され、水素イオンH+より水酸化物イオンOH-の数が優勢となってゆくという事です。
水和反応はコンクリートがまだ固まらない、練り混ぜ・打ち込みから間もない数日間で一気に進行してコンクリートを硬化させます。
材齢4週間のころには十分な強度が発揮されるまでに硬化していて、その後も未反応のセメントに水分が供給され続ける限り、じわりじわりと極めてゆっくり水和反応は続いていきます。
これを時系列のペーハーで考えてみると、材齢0週から4週にかけて12程度まで右肩上がりで増加し、中性化さえ無ければ以降材齢は年単位で横ばいに推移しつつ13程度に落ち着くはずです。
ではコンクリートの中性化とは何なのでしょうか?
Ⅱ.コンクリートの中性化と問題
健全なコンクリートのPHは12~13程度です。中性化と言う単語を聞いたことがなくても、中和は聞いたことがあるのではないでしょうか。中性化とは化学反応の中和をイメージしてさしあたり問題ありません。つまり酸と塩基質が反応して塩(と水)を生成するあの化学反応です。
コンクリートの場合、セメントの水和反応によって水酸化カルシウム(塩基)が生成されます。そこへ大気中の二酸化炭素(酸)が出会ってしまうと、炭酸カルシウム(塩)と水に化けるといったシナリオになっていて、次のように表します。
Ca(OH)2 + CO2 → CaCO3 + H2O
このように水和反応で蓄えた塩基質が酸に侵され塩・水と化すことでOH-は消滅してしまい、ペーハーが減少するのです。
大気中の二酸化炭素の他にも、自動車排ガスの亜硫酸類(SOx)や酸性雨といった中性化の要因が存在しています。
炭素や酸素のつもりで想像してみてください。
塩基質を反応させるCO2は、呼吸をする全ての生物が生産者です。とりわけ人類は、呼吸の他にも経済や文明といったエゴニズムのために莫大な二酸化炭素や亜硫酸類を生産しています。
事実、気象庁調査によるCO2濃度は、綾里・南鳥島・与那国島の3観測点で2000年の約370[ppm]から2019年現在の約415[ppm]まで毎年平均+2.3[ppm/年]の増加傾向にあります。
私たち人類が葉緑体を持つ植物のように二酸化炭素を還元できる体質へ進化すれば、状況は変わるかもしれませんがこの背景からわかるように、地球上において二酸化炭素からコンクリートを中性化させないことは現実的に容易ではありません。
以外かもしれませんが、中性化してしまってもコンクリートの圧縮強度が変化することはありません。
問題はコンクリートによる鉄筋(鋼材)の防錆効果が減少してしまうことです。
※中性化の問題はコンクリートには現れません。従って第1話に登場した、現存する世界最古の(無筋)コンクリート構造であるローマのパンテオンではコンクリートの中性化に係る問題の検討は必要ありません。
Ⅲ.コンクリートの中性化とRCの寿命
RCはコンクリートを鉄筋(鋼材)で補強した構造です。
コンクリートの中性化や、何らかの悪条件が祟って鉄筋が錆びてしまうと、錆びは鉄筋を膨張させ、膨張した鉄筋は内部からコンクリートへひび割れを生じさせます。
このひび割れからコンクリート内部に酸性傾向の雨水が回り込み鉄筋をよけいに錆びさせる。するとさらにひび割れが開きより奥深くまで雨水が侵入し新たな鉄筋が錆びる…
このように連鎖的な鉄筋の腐食が始まると、もう歯止めがききません。
こうなってしまうともうRCではありません。
コンクリートと錆びた鉄筋による芸術作品です。
ということは、RCの寿命は鉄筋が腐食しない期間と考えることができます。
それは鉄筋の防錆効果が継続している時間、つまりコンクリートの中性化深さがRC内部の鉄筋まで到達しないまでの時間です。
RC躯体面から鉄筋までの最短距離(その間のコンクリートの厚さ)を”鉄筋の被り厚さ”と呼び、50mm以上と規定されています。
つまりRCの寿命は最短の場合、コンクリートの中性化深さが50mmに達するまでといえます。
そして前回第3話に登場したクラックも、RCの局所的な寿命を左右する要因の一つであることがわかると思います。
Ⅳ.RCの塗装のすすめ
コンクリートの中性化は防ぎようのない化学現象です。
しかしながらRCの大気暴露面をカバーすることで、コンクリート中性化の進行スピードを弱めることは出来るはずです。
ここで閃いた方も多いと思います。
大気暴露面をカバーするのは”塗膜”です。
塗料の役目は美観だけではありません。建材の保護も担っています。
では、実際のRCラーメン建築物における外壁塗装工事作業工程の一部を紹介していきます。
高圧洗浄ので苔や旧塗膜のチョーキングを洗い流した後、次のような下地調整や補修を行います。
補修などの工程を終えると、いよいよ塗りの工程になります。
上塗り2回目
下塗り→上塗り①→上塗り② の3工程によって、下塗り1層・塗膜2層の計3層が形成されます。
RCの大気暴露面がこれら3層に包まれることで、大気中のCO2、NOx、酸性傾向の雨水などのコンクリート中性化因子との直接的な接触を防ぎます。
これによってコンクリート中性化の進行スピードを遅らせ、つまりはRCの延命につながります。
Ⅴ.まとめ
コンクリートの中性化とは、健全なコンクリートのペーハーが12~13の強アルカリ性のところ、大気中のCO2などと化学反応を起こしてしまい、ペーハーを減少させる事象であり、RC経年変化の前提としてコンクリートは中性化するものである。
そしてRCの塗装工事は、建築物の美観のみならずコンクリートの中性化の進行を遅らせる保護機能面からも非常に重要といえる。
鉄筋コンクリートは剛健のようで繊細ですね。
鉄筋コンクリートを考える ~第4話:RCの寿命とコンクリートの中性化・延命のためにも塗装のすすめ~ をお届けしました。
■□次回予告■□ 鉄筋コンクリートを考える ~第5話:ウチは木造なんだけど…あまりに身近なRC~ 乞うご期待!
★トラストは長野市で気軽に相談ができる《外壁・屋根塗装ショールーム》を展開しております★
外壁塗装・屋根塗装・雨樋・雨漏り・サイディングなどでお困りの方はお気軽にどうぞ!
優良店・口コミ評判店目指して頑張ります(^^)
【よくある塗装に関するご質問】はこちらにまとめさせていただきました。